学校だより11月号

 

 

                 にしはら                                            渋谷区立西原小学

                                                                                  平成1911月1   11     

  校 長  市 川 直 道

 初めて校長として赴任したのは東京でも西方の山間の学校で、その地を訪れたのは三月の末のことでした。バス停からなだらかな坂道をあがっていく途中の草地の中にひっそり

と石碑が立っていました。丸みを帯びた文字で、次のような詩文が刻まれていました。

「 ね が ひ 」人と人のあひだを 美しくみよう/自分と人のあひだを

                                             美しくみよう/つかれてはならなゐ/  八 木 重 吉

 妙に暖かく感じたのは、文字の形のせいなのか、日だまりの石碑に注ぐ日差しのせいなのか、詩の内容からくるものなのかよくわからないまま、深く心に刻まれたのを覚えています。後で知ったのですが、学区内に八木重吉の生家があり、私が赴任した当時は資料館になっていました。その地域は今頃になると、山は紅葉の色が美しく何種類もの紅と黄色が鮮やかな模様を織りなし、澄んだ空気の中で秋を染め上げていました。八木重吉が、「秋の詩人」といわれる所以はこうした自然の中で育まれたことによるのだろうと勝手に想像したものです。10月末の読売新聞の「編集手帳」には八木重吉の「雲」という詩が取り

上げられていました。

「雲」くものある日/くもはかなしい/くものない日/そらはさびしい

「編集手帳」は雲の不在を空が寂しがるのは分かるが、自分の存在を悲しがる雲の心境はどういうものであったかと述べています。

「言葉の力で日本の未来を拓こう」と、「文字・活字文化推進機構」という財団法人がこの10月誕生したそうです。日本人は日本語を使っているが、文字を読み取る力、文字に込められた意味をくみ取る力といった国語力が衰えてきているのではないかという福原会長の言葉が最近の新聞で紹介されていました。「読む」「書く」「話す」「聞く」という総合的な言葉の力を育み、活字文化の振興を図ることで、豊かな人づくり、活力のある地域、国づくりを目指そうとするもののようです。

 八木重吉の「雲」の詩は、澄みわたる秋の空の中で、雲は独り、空に似合わない自分の存在を哀しいと思ったのでしょうか、さびしい詩であることに違いはありません。

西原小に念願の図書室ができあがりました。木の香りが真新しい図書室は明るくゆったりとしています。読書は最も個人的な営みと言われます。個人の読みのペースで、個人の想像の世界を描き、じっくりと読書に浸らせたいと思います。言葉は内容をもち、イメージをかき立て、情報を伝えます。また、言葉が持つ価値は、人に知見をもたらし、規範意識や倫理感などの思想をはぐくみ、豊かな人間性を培います。

静かな秋に、子ども達がふと手にした本の中から、透き通った美しい言葉に出会えたらと思うと、心が和みます。

今後とも本校の教育に深いご理解とご協力をお願いいたします。


 

  

 

                                    

     

 
 
 
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