現在日本では、フランスのシャンソンはそれほど聴かれません。しかし私どもの世代では、若者にとってシャンソンはなくてはならないものでした。シャンソン喫茶なるものが東京に多数あり、そこで多くのシャンソン歌手が腕を上げ、舞台に立つようになったのです。
また、当時のフランス映画はハリウッド映画とは違う文芸の香りをもっていました。フランス映画の巨匠の作品には、よくシャンソンが映画音楽として使われました。私どもは、現在でも、それらシャンソンの歌声とアコーディオンの音色をはっきりと覚えています。
この前パリにきたときも、ぜひ本場のシャンソンを聴きたかったのですが、時間の関係でできませんでした。 |
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今回は、旅行に発つ前に調べて、モンマルトル・サクレクール寺院の裏にあるラパン・アジルという評判の高いシャンソニエに行くことにしました。
シャンソニエとは、日本語ではシャンソン酒場ということになりましょうか。 ラパン・アジルとはすばしこいウサギの意味で、ユトリロやピカソも通ったという老舗です。最近パリでも少なくなった本格的なシャンソンを聞かせる店ということでした。 |
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マドリードのフラメンコと同じく、このシャンソニエも夜10時ごろ開き、12時ごろから盛り上がるそうです。そこで、パリに着くとすぐ店に電話して、10時半の予約を取りました。知らない土地でこの時間なので、ホテルでタクシーをよんでもらって店に行きました。
店に入ると、中は薄暗く、壁には出演したシャンソン歌手の写真や来店した名士などの写真が貼ってあります。この土地にゆかりの深いロートレックやユトリロの作品とおぼしき絵画もかざられていました。 |
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しばらくそこで待ってから、出演している歌手が変わるときに、私どもも店内に入りました。 |
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内部は40席ぐらいの小さい場所で、お客は部屋の壁に沿って座っています。 客席のところどころに赤い布で覆われたダウンライトがあるだけで、部屋全体は人の顔がやっとわかるくらいの暗さでした。
入口に近いところに小型のアップライトピアノがあり、ピアニストが座っています。歌手はその横で歌うのですが、歌手のところには弱いスポットライトがあたっています。
私どもも、壁際の席に案内されました。 |
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甘いシェリー酒がだされたので、それを飲みながら待っていると、中年の男性歌手が現れました。体格もよく、すごい声量です。ピアノはクラシックの演奏にくらべて控えめで、歌をたてるように弾きます。楽器としても、やや控えめな音質のようです。
歌手は次々に違う曲を歌います。時には、お客に話しかけてリクエストを受け、ピアニストと話し合ってから、その曲を歌います。残念ながら、私どもの知っているシャンソンはほとんどありませんでした。 |
しかし、シャンソンの世界が大変間口が広く、曲数がすごく多いのがわかりました。
お客さんたちがシャンソンに詳しいのはおどろくばかりで、歌手が歌いはじめるとすぐにそれらに唱和します。ときどきタイミングのよい突込みをいれ、歌手とやりあったりしていました。こういうのは大劇場でのコンサートではとてもできないことで、シャンソニエの楽しさの一つでしょう。
残念ながら、部屋の照明が暗くまたフラッシュを使えなかったので、よい写真が取れませんでした。しばらく後に、中年の女性歌手がアコーディオンを持って出てきました。アコーディオンを自在に弾きながらの名人芸におもわず感激し、終わったときは夢中で拍手しました。
しかし、この女性の姿もうまく写真にとることができませんでした。
シャンソンの芸も、実にさまざまあるものです。私どもがいる間に、男性歌手が4人ほど、女性歌手が2人出てきましたが、中には歌と語りが半分ぐらいずつという人もいました。これも、シャンソンの特徴のひとつでしょう。
また、60歳を越えているとおもわれるベテラン男性歌手もいましたが、その声の力強さ、若々しさには驚くほかありませんでした。ところがこの人は、さすが芸暦の長さでしょうか、お客を笑わせるのが実に上手のようで、一曲終わるとすかさず何かしゃべってお客を笑わせます。残念ながら、私ども日本人にはまったくわからなかったのですが。 |
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この若い女性歌手はまだ修行中のようで、声はみずみずしく張りがありましたが、シャンソンとしての面白さという点では、先輩たちに一歩及びませんでした。 この人は、お客を席に案内したり、お酒を持ってきたりしていたので、この店で働きながらシャンソンを勉強しているのでしょうか。
少し前に歌った男性歌手が、この若い女性が歌うときのピアノ伴奏をしていたので、彼がシャンソンの先生かも知れません。 |
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がんばって勉強して腕を上げて、有名な歌手になってほしいと思います。 |
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楽しく本場のシャンソンを聴いているうちに、12時半をまわってしまいました。明日は朝一番でルーブル美術館に行く予定なので、この辺でホテルに帰ることにしました。
外に出ると、出演者の皆さんが次の出番まで楽屋で休んでいるのが見えました。楽屋といっても店の料理をする台所のようで、銅なべなどがたくさん置いてありました(^_^)。
立っているのはもっとも実力派と思われる男性歌手です。 |
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座っているのはピアニストで、控えめな演奏ながら、シャンソンの味をしっかりと聞かせてくれました。 |
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このマダムは、ラパン・アジルの女主人で、この業界では有名な人だそうです。少しご祝儀をあげたら、上機嫌で私どもと一緒にカメラに収まってくれました(^_^)。
店内は暗くてよくわからなかったのですが、あとでこの写真をみると、大変魅力的な女性です。若いときは、相当な美人だったのではないかと思われます。この業界では有名な女性と聞きましたが、写真を見てそれがわかるような気がしました。 |
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なお、この夜の料金は、一人1ドリンク付きで25ユーロほどでした。本場のシャンソンが聴けたのですから、安いものです。 |
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店の外に出ると、この男性歌手が外の空気を吸っていました。12時半以降の出番まで一休みしているのでしょう。 この人は、どちらかというと歌よりは語りのほうでアッピールするタイプで、お客とのやりとりが実にたくみでした。
この店はモンマルトルの丘の上にありましたが、そこから坂をおりたところが大通りになっていて、すぐにタクシーを捉まえることができました。 |
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ホテルまでは近いので、助かりました。明日は美術館に行くので、早々に就寝しました。 |